わざと負けたらダメダメ

Mちゃんは穏やかな女の子です。

ペーパーで分からない問題があっても
すぐに諦めずに粘り強く取り組みます。

行動観察の授業でみんなと話し合う時、
常にリーダーシップをとるわけではないけれど
よく考えて適切な意見を出していました。

そんなMちゃんですが
勝敗がつくゲームに負けると
ぽろぽろと泣いてしまうのです。

受験生とはいえ幼稚園児。
授業中に泣いてしまう子だっているし
トラブルを起こしてしまう子もいます。

けれどもMちゃんのそれは、とても気になりました。
だって、普段のMちゃんの姿と違い過ぎるのですもの。

面談の時、お父様にご家庭での様子を伺ってみました。


Mちゃんのお父様もお母様も
心優しい穏やかな方です。

聞けば
家族でトランプなどのゲームをする時
いつもMちゃんに勝たせてあげていたということです。

「Mが負けそうになっても『逆転勝』をさせていました。」
と優しい笑顔で仰るお父様。

幼稚園の先生からも同じような話があったので
可哀そうになって
ますます勝たせてあげていたそうです。

家庭内負け知らずのMちゃん・・・。

「お父様、ご家族でよくされるゲームは何でしょうか。」

「最近は、トランプの『スピードです』」

(二人で対面で行うトランプゲーム。
赤札・黒札に分かれて数列通りに札を繰り出し
早く札を出し切った方が勝ち。
数列に対する即時反応を高める。
小西@推奨)

「今日から、スピードは真剣勝負でお願いします。
多分、初めてお父様に負けるMちゃんは号泣します。
泣いても放置です。
いえいえ、何にもかわいそうじゃありません。
放置一択です。
彼女が「もう一回やる」と言ってもわざと負けてはなりません。
更に泣いても放置一択です。
そして
涙が枯れた頃
どうしてお父様が勝つのか
どうやったらお父様に勝てるのか
Mちゃんが勝つための戦略を
おふたりで話し合ってみて下さい。」

Mちゃんのお父様は
「さっそく今日から頑張ってみます。」と
仰って下さいました。が、
優しいお父様には酷だったかもしれません。
「放置一択」と言い放つ私を見るお父様の
驚く顔が忘れられません。

後日談をお母様から伺いました。

本気で勝負をしたお父様に負けたMちゃんは
予想に反して泣いたりせず
「パパ!すごく早いね!強い!」と驚き
すぐに勝つための作戦会議を始めたそうです。

心優しいお父様は
泣くMちゃんを放置一択せずに済んで
さぞ安堵されたことと思います。

さて、Mちゃんはピタリと泣かなくなりました。
それどころか行動観察のゲーム中に
「相手の顔じゃなくて手を見た方が良いよ」
「手を伸ばした方がタッチし易いよ」と
友達に適切なアドバイスをするようになりました。

勝った負けたよりも
そのプロセスが楽しい、とMちゃんは気が付いたのです。
そしてプロセスが楽しい、と思える「考える力」を
少しずつ家庭で育んできたのはお父様とお母様です。
その優しさから
お水を遣りすぎてしまうことはよくあること、
気づいた時に調整すれば問題なしです。

Mちゃんは
第一志望の共学校に進み楽しい毎日を送っています。
もう高学年。烏兎怱怱。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です